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  • わたしの鏡と穴の喪失

     なかなかうまく受け止められなかったのだけど、大きなことだったので、書き留めておく。

    2週間前に、半年間お世話になったカウンセラーとさよならをした。理由は先生の都合により遠くへ引っ越しをされたから。

    たった半年間の付き合いだったのに、大きな大きな喪失感だった。
     
    誘導も注意もアドバイスもしない先生。いつの間にか自分の中にある自己矛盾を浮き彫りにさせてくれる機会や、本当は悲しかったこと、本当はやりたいことなんかに自分で気付かせてくれる場をつくってくれた。

    カウンセリングのその場では気付けなくても、帰宅中とか、お風呂に入ってるときとかに、ふと気付けるような、そんなカウンセリングだった。
    そして、今まで誰にも告げることなく秘密にしてきたことや、しまいこんでいたどろどろしたものを、意を決してはじめて打ち明けた相手だった。
     
    先生はわたし自身を映してくれる鏡になりきってくれ、イソップ童話「王様の耳はロバの耳」にでてくるような、わたしにとっての深い穴のような存在だった。
    イソップ童話ではこの穴は、葦によってバラされてしまうけど、 先生は秘密ごとやどろどろしたものすべてを、先生の体ごと持って去ってしまった。
     
    とても心地の良い「そうですか」と言ってくれる先生だった。とても穏やかな女性。丁寧に相槌をうってくれ、発言するときはとても慎重にことばを選んでくださった。それだけで十分だった。お礼を言っても言い切れないほど、わたしにとっては大事な存在だった。先生がいなければ、わたしは今ほど元気になっていないと言い切れる。 
     
    この病院をやめるんです、と告げられたときは、頭が停止した。ことばが出てこなかった。ただ唖然としてしまった。
    これからどうしていこう。たった半年だったのに、やっと礎を築き上げてこれたのに。わたしひとりでどうやってこのぐちゃぐちゃの頭を、心を、整理していけばいいのか。どう付き合っていけばいいのか。

    先生ひどい、と思った。なんで勝手にいなくなっちゃうの。やめないで!
    でもひどいと思いたくない相手だったから、この気持ちと向きあおうと思った。
     
    恋人に相談した。カウンセリングにはときどき恋人も同席してくれたし、告げられた時は恋人も一緒にいたから、どうしようねって。あの先生ほど良い先生にはなかなか巡り会えないかもしれないけど、次の良い臨床心理士の先生を探そうよ、ね、といわれた。
    そんなの全然考えられない。そこまで頭がまわらない。次なんてない。先生じゃない先生なんて。やっぱりうまく向き合えなかった。
    たくさんたくさん考えた。
     
    その3ヶ月後、ちゃんと先生とさよならした。ありがたいことに、怒りとか恨めしさはもうほとんどなかった。泣きもせず取り乱しもせず、ありがとうございました、と伝えた。
    最後に先生から、何か伝えたいことや、訊いときたいことはありますか?といわれたので、わたしは、これからどうやっていけばいいのかわかりません。と答えた。「先生も答えづらいと思うんですが、今それしか頭にないです」と。
     
    そしたら先生がはじめてこんな長く、次のようなことを伝えてくれた。
    「そうですね。あなたがおっしゃったように、わたしはその質問にうまく答えられないです。でも、たったの半年ですがあなたと一緒に過ごさせてもらって、あなたはちゃんと自分で自分がどうすればいいのか、どうしたいのかを考え、判断する力があると思いました。ただ整理することに時間がかかるだけです。今までのカウンセリングでわたしがなにか提案したことはありましたか。すべてあなたご自身で気付きを得て、それを真摯に受けとめたことから選択肢を見出し、ご自身で決めてこられはずです。あなたは大丈夫だと思います。そしてあなたには、あの優しくて芯のある恋人がそばにいます。うまくお互いを補いあっている、おもしろい組み合わせだと思います。」
    「あなたは前回のカウンセリングで、働きたいとおっしゃっていましたね。あなたの好きな方がコンビニで働いているとブログに書かれていたことから影響を受けたんでしたね。まだこれからも波があると思いますが、今は、簡単でも確実にこなせる仕事がいいとわたしは思います。コンビニの仕事をわたしは詳しく知らないので、それがいいかどうかはわたしが判断することを避けますが、わたしの患者さんの多くが、社会復帰の第一歩にコンビニを選んでいます。短時間で働けることと、仕事がマニュアル化されていることがいいようですね。」
    「わたし、いつから働けばいいんでしょうか。今すぐ働きたい気もするけど、まだ無理な気がするし。朝も全然起きれないし寝つきも悪いし。」
    「そうですね。涼しくなってからがいいんじゃないでしょうか。暑いと何かとたいへんですしね。涼しくなって、季節が穏やかになってから、はじめてみたらいいかもしれませんね。」
     「今暑いですし、結構先ですね。でも、涼しくなってからという時期は、気持ちを徐々に持って行きやすいですね。……。あ!なるほど。先生、わたし、働きたいです。でも働きはじめたら、またしんどくなると思います。でも、しんどくなっても大丈夫なような場所をつくっておくことで、なんとかそのしんどい状態が悪くなりすぎないような対策ができると思います。わたし、先生が辞めてしまわれたあとも、この病院で、新しい先生とカウンセリングをしてみます。働いてみたいし、継続して働きたいから、カウンセリングを続けてみようと思います。というか、今自然と思えました。」
     
     ***
     
    昨日、新しい臨床心理士の方にカウンセリングをしてもらってきた。
    覚悟してたけど、やっぱり前の先生と比較してしまった。ちがう。こんなんじゃない。あの先生はああだった。
    そして、また1から今までの経緯のようなものを話すことで、傷をえぐられた。そしてしゃべりすぎた。
    まだ心を開いていない人に対して自分のことをしゃべりすぎると、あとからえもいわれぬ不安感が残る。これはよく知ってることだったのに、またやってしまった。
     
    これからいい関係を築けるか、分からない。前の先生と同じ関係でなくてもいいから、居心地の良い距離感と空間を築けるのか。
    これから今の先生と築き上げていくには、途方に暮れる作業だと痛感した。
     
    現時点では今回の先生に警戒心を持ってることは事実。それを認める。おざなりにしない。自分がいやだと思うことを見過ごさない。できる限り、見て見ぬ振りはせず、認めること。
    ダメだったら、少し時間を置こう。
     
    わたしの大切な存在だった先生を、ちゃんと踏み台にして、一歩一歩やってくつもり。
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    疲れるけど